第16章 白と紺 

 宇宙世紀0087、8月10日・・・ティターンズがフォン・ブラウン市武力制圧の作戦行動を今まさに実施しようとしているその頃、クレイモア隊旗艦「ティルヴィング」の姿はグラナダにあった。アーガマ隊のクワトロ・バジーナ大尉帰還後、地球での小競り合いは一応の落ち着きを取り戻し、戦場はまた宇宙に場を移すことになった。そして、グラナダの参謀本部にティターンズのアポロ作戦の情報が入って来る頃には、既にティターンズの艦隊がサイド5を通過した地点にまで迫っていた。

 午前10時を回った頃、グラナダに駐留している部隊で最大の戦力を持つクレイモア隊に出撃命令が出た。既に阻止作戦行動を展開しているアーガマ隊からの増援要請を受けてのことである。ロレンス大佐からのその出撃命令の通信を受けて、ログナーはすぐにティルヴィングを出航させた。
「アルドラ、敵艦隊の正確な位置は解るか?」
「は、偵察部隊からの2時間ほど前の報告ですが、アレキサンドリア、新型の大型艦を始め艦艇5隻がサイド5宙域を通過して、月面沿いをフォン・ブラウンまでおよそ7時間ほどの距離を進行中とのことです。」
「今から最大船速で向かってもギリギリだな・・・急ぐぞ、最大船速でフォン・ブラウンに向かう!」
「了解!」
 ログナーはそう指示して見せてはいたが、どう見ても間に合わないと踏んでいた。敵艦隊のフォン・ブラウン到着直前で接触できる計算であったが、接触から交戦の時間を考えると、時間は明らかに不足していた。グラナダとフォン・ブラウンは月面では丁度正反対の位置にあり、ティルヴィングでも4時間はかかる。さらにMS隊に足止めを喰らわされたとしても、敵艦隊のフォン・ブラウン接触とはギリギリの勝負である。
 エウーゴはその後ろ盾のほとんどを失ってしまう事になりかねない危険がある以上、手をこまねいているわけにはいかないのが、エウーゴのおかれた状況であった。フォン・ブラウンの中立性とアナハイム・エレクトロニクスの協力があるからこそ、今まで何とかティターンズと戦って来れたのである。占拠されたとしても、その奪回行動は絶対に成功させなければならない。しかし、ログナーは知らなかった。偵察部隊がティターンズの艦隊の姿を確認した頃には、既にニューデリーが先行してフォン・ブラウン市に向かっていたことを・・・
 そして、ニューデリーの目的がまさに自分たちであったことを・・・その直後、ログナ−はMS隊のパイロット全員をブリーフィングルームに集合させていた。いつも通りのブリーフィングである。
「ティターンズの艦隊は予測ではあと4時間少しでフォン・ブラウン市にまで来る事になる。ティルヴィングが敵艦隊と接触できる予定時間は4時間後、阻止行動としてはギリギリだ。敵艦隊を捕捉次第MSを射出する。MSには目もくれずにアレキサンドリアと他の艦艇を可能な限り叩き、相手の撤退に追い込め。ティルヴィングも敵艦隊の中へ突撃する。エストック、フランベルジュ両小隊はティルヴィング発進後敵艦隊を攻撃しろ。」
 一通り説明を終えてから、ログナーはいつも通りパイロット達を見回す。皆今回の事態の重大さが解っているらしく、それぞれが緊張の面持ちを隠せないでいるようだった。
「MS隊を全機、艦隊に向けてしまったら、ティルヴィングの護衛はどうなるんですか?」
 ファクターが挙手の後質問した。その質問は当然の質問である。母艦まで敵艦隊に突入するのでは、最新鋭の艦でもひとたまりもないからだ。
「ハッキリ言ってしまえば、そんな余裕はない。MS6機で艦艇6隻とその艦載MSを相手にせねばならんのだ。沈まない程度にムチャはしないつもりだ。だから、お前達も自暴自棄な突撃だけはするなよ。フォン・ブラウンが仮に制圧されたとしても、その奪回は可能なんだからな。アーガマを主力とした艦隊が我々よりも少し先に敵艦隊に接触している。敵艦隊を挟撃できるから、阻止は可能だ。作戦は以上だ。各自MSデッキで待機せよ。」
 ログナーが締めくくると、全員が敬礼してその場を退出した。

「エリナ、調整は終わってるのか?」
 自分の機体のコックピットに上がってからエリナを発見したショールは、彼女を呼び止めた。
「ええ、万全よ。他の機体もバッチリ、あとは出撃を待つだけね。」
 一度ショールの方に振り向いて言った後、すぐにレイのリックディアスの方へ向き直った。
「そうか、早いな?」
「それくらいあたしなら当然でしょ。あなたは何も言わずに戦ってくればいいの。」
 エリナはショールの方を振り向かずに言った。
「どうした?いつものお前らしくもない。」
 ショールはコックピットの外からのいきなりの声に顔を向けると、ファクターの姿があった。
「エネスは来る、そんな感じがするんです。」
 ショールはいつになく真剣な表情でいった。こんなショールを見るのは、ファクターにとっては久しぶりだった。いつも余裕と自信を表しているのが、ショール・ハーバインというエウーゴ屈指のエースパイロットの表情なのである。
「解るモノなのか?」
「グリプス、ジャブロー降下作戦、ここぞと言うときに必ずアイツが出てきたんです。アイツほどのパイロットならば作戦に呼ばれることだって充分あり得ますよ。」
「お前は奴を倒せるのか?」
 ファクターの質問に、ショールは少しどきりとした。
「アイツを倒せるのはオレだけですよ。」
「そうじゃない、お前らは親友なんだろ?戦えるのかと聞いているんだ。」
 ショールは勿論、ファクターの聞きたいことが解っていた。
「・・・オレ達は理想を共鳴することで、実現させようと行動することでつながってるんです。馴れ合いはアイツが嫌いますし。勿論好きでは戦いませんけどね。」
「もし出てきたら、奴はお前に任せるぞ。オレ達は先にやるべき事があるし、奴を放っておく訳にもいかんだろうからな。」
「・・・解っています。」
「じゃぁな。」
 ファクターは無愛想に立ち去っていった。
「エネスは・・・来る・・・」



 そして、ティルヴィングはフォン・ブラウン市手前20km地点まで来ていた。
「艦長、フォン・ブラウン市の方向で戦闘の光を確認!」
 ミカ・ローレンス軍曹が観測班からの報告をログナー艦長に伝える。
「よし、MS隊出せ!本艦は第一船速で戦闘空域に向かえ!」
ログナーがテキパキと指示していく。それをブリッジクルー達が迅速に対応していく。MSデッキ内も喧噪に包まれる。
「フランベルジュ隊から射出、射出完了後20秒後にエストック隊射出してください!」
 デッキ内を響き渡るミカの声が、デッキクルー、パイロット達を色めきだたせる。
「ぼやぼやするな、マチス、アルツール!」
 ナリア・コーネリアがカタパルトデッキに上がっている自機からネモに向かって怒鳴り散らした。
「今日は先に出るんだ、すっとろい事するんじゃない!」
 大声を張り上げながら、マチスとアルツールのネモがカタパルトデッキに上がってくるのを待った。実際2人が上がってくるまでに15秒ほどであったが、ナリアには遅く感じられた。自分でも気が競っているのが解ると、それを鎮めるかのように出撃の号令をかける。
「ナリア・コーネリア、フランベルジュ隊1番機、でるよ!」
 ナリアのリックディアスがカタパルトから射出され、30秒ほど後にマチス機とアルツール機が発進した。
「艦長!左舷11時方向に新たな艦影!」
 ミカの報告である。
「なんだと!・・・艦の識別は?」
「・・・・ニューデリーです!!」
「くっ!エストック隊を急いで射出させろ!邪魔が入る前に作戦を遂行する!」
「了解、エストック隊、発進急いで下さい!11時から敵艦が接近!」
 ミカが艦内放送を利用して呼びかけた。
「敵も抜かりなしって訳か!ショール、レイ、いくぞ!」
「了解!」
 ファクターもショールも、報告で言われなくともその艦がニューデリーだと直感していた。それに関してはログナーも新たな敵襲の報告を受けたときに感じていたことであった。そして、ショールはどういう形であれ、今回こそ決着を付けねばならないと考えていた。


 フランベルジュ隊がティルヴィングを発進してフォーメーションと取った頃に、ファクター機とショール機がカタパルトデッキに上がった。レイのリックディアスも射出の順番を待っている状態、準備は万全である。
「ミカちゃん、状況を!」
 ファクターがやや急いだ口調で声を上げる。
「前方12時の方向、距離2500で敵艦隊とアーガマ隊が交戦中、フランベルジュ隊が先行しています。それと、11時方向から一隻、サラミス級が接近中です。距離は1500!エストック隊もアーガマの援護に向かって下さい!」
「了解だ、早く片付けてここの援護に回る。ファクター機、エストック出るぞ!」
「接近中の艦艇からMSが射出されました。こちらに向かっています!」
 ミカがショール機に通信を入れる。
「無視しろってんだろ?了解だ。でも、オレ達に向かってくる分は知らないぜ!?ショール・ハーバイン、リックディアスでるぞ!」
 ファクター機に続いて、ショール機も発進する。レイ機も既に発進体勢が整っていた。
「少尉、11時からの敵艦は無視して下さい。」
「了解、レイ・ニッタ、リックディアス出ます!」
 ティルヴィングからの発進を終えたエストック隊は、ファクター機を中心にVの字の隊形で前進した。少し前方にはフランベルジュ隊のバーニアの光が見える。そして、左に位置していたレイ機には左前方に見えるノズルの光から更に4つの光が放たれているのが判った。その4つの光は、真っ直ぐに先行していたフランベルジュ隊に向かっていた。敵艦から発進したMS隊の目的がグラナダからの増援の迎撃であることは明白だった。
「フランベルジュにMSが接近しています!」
 レイは、自機のモニタで確認できた状況の変化を、ファクターに報告した。

 ナリア・コーネリアは横一列に陣形を取り、アーガマ隊と敵艦隊の交戦ポイントに向かって全速力で進んでいた。全速力と言っても、ナリアのリックディアスとマチス、アルツールのネモとは移動速度が違うので、それに合わせて陣形を維持する範囲での全速であった。
「中尉、左からMS隊が接近してきています!」
 マチスからの報告を聞いて、ナリアは即決した。
「無視だよ、無視!MSは後衛に任せな!」
 そう言っている間にも、フランベルジュ隊の陣形の間を縫うようにビームライフルの閃光が走った。
「来た!?」
ナリアはコックピットのシートから、ビームが発射されたであろう左方向を見た。全天周囲モニタの左側には、MSの姿が確認できた。どうやら無視できそうにないわね・・・ナリアは決心した。
「マチス、アルツール、先に行きな!あたしもすぐに後衛に任せてから行く!」
 自分の姉ははエストック小隊到着までの時間稼ぎをしようと言うのか・・・マチスは心配であったが、テコでも動かないナリアの性格を知っていたので、敢えて無理には引き留めなかった。ただ無理をしないで欲しい・・・思うのはそれだけであった。
「了解!アルツール、いくぞ!こうしている間にもアーガマ隊を援護しないと!」
「判ってる!」
 マチス機とアルツール機はすぐに、前方に向かって進んでいった。
「なんだ、一機残るのか・・・?」
 その接近中の紺色のMSマラサイに乗っているエネスは、残っているMSがリックディアスのシルエットを持っていることを確認していた。
「クラック、後衛がいるかも知れない、奴は俺に任せろ。行ったMSは構うな!」
「りょ・・了解!」
 エネスは、クラックが敵の思惑を察知できるような戦術観を持ち合わせていないことは判っていた。士官学校を卒業した割には、知らなさすぎるという疑問さえ持っていた。MSの操縦技術に関しては突出した素質を持っていたが、知っていて当然のことを知らない部分もあった。クラックの配属当初の階級の事と相まって、エネスには不可解だった。
「あのリックディアスは赤・・・奴ではないとすれば、あのときの男か!?」
 エネスはかつてティルヴィングに奇襲を掛けたときに邪魔をしてきたリックディアスのパイロットの事が思い浮かんだ。
「増援を叩け!」
 エネスはエウーゴには恨みはなかった。しかし、連邦を改革する具体的な方策を見出せていない今のところでは、ティターンズが勝っておかないといけないと感じていたので、ここでは全力で戦うしかなかった。エネスはクラック達に指示をして、自機をナリアのリックディアスに接近させていった。クラック達は、自分たちからやや離れた前方に見える光点に向かって、速度を速めていった。そして、エネスの濃紺のマラサイが更にビームライフルを3発、発射した。
「速い!?」
 ナリア機が水平に右へと機体を滑らせた。ビームの内1発が左足をかすめた。
「出来る奴だが!」
 エネス機がその回避運動を予測して、同じ方向に機体を滑らせた。ビームサーベルを抜く。ナリア機もそれに合わせてビームサーベルを抜かせた。そして、マラサイは急激な加速と共にナリア機に突進する。
「ぐっっ!なんて速さだ!」
 エネス機は左手のビームサーベルで袈裟懸け気味に斬りかかるが、そのありふれたパターンの攻撃でも、ナリアはビームサーベルで受け止めるのが精一杯であった。思わず機体の移動が止まる。この攻撃の速さは機体性能じゃない、パイロットの腕・・・無駄のない動きだ、ナリアは戦慄した。ティターンズのパイロットでも、これほどまでに実戦的な、無駄のない運動をすることは容易ではない。(濃紺のMS・・・これがウワサのエネス・リィプスか!)
「でも、負けられない!」
 気迫を吐き出して、ナリア機はビームサーベルを左から右へ、横に薙払った。
「貴様ァッ!」
 エネスがそれをビームサーベルで受け止める。直後、ビームサーベルをオフにして、右手のライフルを至近距離で放った。ナリア機は水平移動を再び開始したので機体への直撃を免れたが、左手に1発を喰らってしまい、肘から下が吹き飛んだ。
「殺られる!?」
 ナリアが時間を見計らって作戦の続行を決意したとき、エネス機の後方からビームの矢が走ってきた。
「なにィッ!?」
 エネスは呻いた。ビームはエネス機の遙か横を通り過ぎていたので。回避運動の必要はなかった。
「紺色のマラサイ!?」
 ビームを放ったのは、ショールのリックディアスだった。エストック隊が追いついてきたのだ。
「白いリックディアス!」
 マラサイの後方モニタに映っている、新たに出てきたMS隊の中に白いリックディアスを確認したエネスは、無意識に叫んだ。そして、自機を振り向かせた。その隙に、左の肘から下がないリックディアスは先に進んでいった。
「ナリアさん・・・大丈夫なのか・・・・」
 ショール機とはファクター機を挟んで反対側にいたレイが、この宙域を去って行くナリア機を見送っていた。
そして、すぐにマラサイに向き直った。
「レイ、先を急ぐぞ!」
「な・・・・了解!」
 ファクターの指示にレイは驚いたが、その指示は当然だと思考を切り替えたので、すぐに前に進み始めた。しかし、ファクターとレイのリックディアスの前には、マラサイが3機並んでいた。白いリックディアスと対峙したエネスとは別行動をとる形になったクラックは、残りのリックディアス2機を見据え、そして、叫んだ。
「ラファエル、お前はアーリントンと真ん中の指揮官機を殺れ!オレは右の奴を殺る!」
 クラックはレイの機体を睨んでいた。白いリックディアスと反対側に位置しているリックディアス、アレはヤツに違いない・・・クラックは借りのある相手であると確信していた。そして、ショールとエネス、ファクターとラファエル達、レイとクラックがそれぞれ対峙すると言う組織戦とは思えないような図式ができあがっていた。

「いくぞ!」
 クラックはマラサイをレイ機へと前進させた。ビームライフルを4発、5発と次々と連射していく。
「デタラメに撃ってるだけだ!」
 それほど大きな回避運動をせずともレイは全弾を回避することが出来たのは、レイが言ったとおりクラックが照準もロクに定めずに、衝動のままに射撃したからに他ならなかった。
「お前はオレが狩る!」
 クラックはその隙に間合いを積めて、自機のビームサーベルを抜いて格闘戦の間合いに持ち込んだ。同時に、レイも自機のビームサーベルを抜いて、少し後退させながら間合いをずらしてクラックの攻撃をかわして後、突きを繰り出した。クラック機はビームサーベルによる攻撃を終えたばかりで、機体の動作はクラックは対応できなかった。左肩を貫かれる。
「く!」
 左肩と胴体を結ぶフレームも切断され、その部分が小さく爆発した。機体はその衝撃で右に流れた。
「今だ!」
 頭部のハッチが開いて、リックディアスのバルカンファランクスが咆哮する。ビームサーベルをオンにしている状態でのビームピストルの使用はパワーダウンを招く恐れがあったからだ。
「しまった、カメラが!」
 マラサイの頭部にあるモノアイ部分が破損して、クラックの目の前、正面モニタがが小さな衝撃と共にブラックアウトした。
「仕方ない!」
 クラックは、一瞬の勝負でカメラと共に自信をも砕かれた事に、歯ぎしりした。そして、ビームライフルを連射しながら機体を少しずつ後退させた。サブカメラへの切り替えのための時間を稼ぐ為である。しかし、今の自分ではある程度のレベルに達した敵には勝てないと、自分の力量を計った。数秒後サブカメラが使えるようになって前方がようやく見えるようになっても、目前のリックディアスには向かわなかった。そして、エネスの方向を見た。

「ショール・ハーバイン!」
「エネス!」
 白と紺のMSは、同時にスラスターを全開にして、お互い急接近した。
「 「連邦を変えるため!」」
 二人の言葉はぴたりと重なる。そして、ショール機はエネス機の上に、エネス機はショール機の下に移動した。その後相手の方を向いてビームを撃ち合う。
「まだここで負けられない!」
 エネスはショールに呼びかけるように叫んだ。ショール機とエネス機の距離は約15m、ミノフスキー粒子散布下でも通信は届く距離である。
「それは同じ!ティターンズを止めなければ、連邦は、人類は変わらない!」
「ティターンズの変革は連邦の変革!」
 ショール機がビームピストルを2発放ち、それを回避しつつ、エネスはマラサイのビームライフルを同じだけ発射する。ショールはそれを当然のように、右回りの回避運動を行って回避する。両機の動きはぴたりと静止した。

 ラファエルとアーリントンのマラサイの攻撃をかわし続けながらも、ビームピストルによる反撃を行ってそれぞれにダメージを与えていたファクターは、レイ機と自分の相手が追撃できないことを確認して、レイ機に指示を出した。
「先を急ぐぞ、時間がない!」
「しかし・・・!」
「相手に追撃能力はありゃしねぇ、後退するしか選択肢がねぇんだよ!」
「了ぅ解!」
 2機は当初の予定通りに、アーガマと敵艦隊が交戦している宙域に向かって移動を開始した。それに合わせて、エネスも各機に指示を出した。
「各機、後退せよ。これ以上の戦闘は危険だ!」
「ぐ・・・・・・・了解・・・」
「了解」
「了解です」
 返事の後、エネスの指揮下にあったマラサイ3機は、エネスを残して後退を始めた。ファクターとレイはそれを相手にせずに先を急いだ。この場には、ショールとエネスの機体しか残っていなかった。


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